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2020年09月

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[No.110] 大野城の希望の星に会いました!

更新日2020年09月01日

お元気ですか!

厳しい暑さが続いた8月、体温より高い気温とマスクに息苦しさを感じるほどでした。コロナ禍、熱中症にも気を遣いながらの日々、まだまだ気を抜けませんね。

 

まどかぴあではウィズコロナでの事業のやり方を模索しながら、前を向いて頑張っています。

先日は、男女平等推進センターアスカーラの男女共生講座の一回目を、多目的ホールで適切で安全な距離をおき限定45人の受講生の方々とともに無事終了しました。実行委員さんたちが初回に選ばれた講師は日巻寿夫さん、『終わらないジェンガ』で九州芸術祭文学賞を受賞した若き小説家、なんと大野城市在住の方なのです。そして、ご自分のことを「主夫」と表現されるわけですから、とても興味深いことでした。西日本新聞の「ひと」でその受賞のことは知っていましたが、爽やかな好青年の登場に多目的ホールは感動に包まれました。

この文学賞は1970年に発足して50回目という節目の年、地方でこのような文学賞が続いているというのは珍しいのだそうです。今も選考委員のお一人である五木寛之さんはその第1回目の選考会では江藤淳さん、安岡章太郎さんと激論を交わしたのだと選評に書いておられ、この文学賞の歴史を深く感じたものです。

日巻さんによる1時間の講演、その後30分くらい私とのトークという形での講座だったのですが、素晴らしいお話で会場の方々は聞き入っておられました。「ぼく、講演会というのは初めてなので、家で1時間ひとりでしゃべってみたのですよ」と、その話の運びはさすがでした。

大学時代の同級生と結婚、パートナーが家計を支え、家事は分担するという形で執筆中、「家族は共同戦線を張っているので、家計が成り立てばどんな形でもかまいません」と。

2歳のお子さんとの暮らしは「もう、かわいくて、かわいくて。食事をするときも、寝るときもずっと一日中かわいい!を連発してます」「主夫でいることに、周りの人の反応は、様々。時にお父さん偉いね!なんて言われますが、特別なことではないですね」と、とても自然体のパパなのです。

そういえば、ずいぶん前に、男女平等推進センターで登山家の田部井淳子さんをお呼びしたことがありますが、そのときのことを思い出しました。一緒に出演して下さったパートナーは「妻が山に登り留守が多く、私がスーパーマーケットで子どもと買い物していたら、近所の人にお父さんかわいそうに!なんて言われたりしてね」とおっしゃったことを。

 

今、買い物中のお父さんに「かわいそう」という人はいないかもしれませんが、「えらいね」と思われるのでしょうか。私たちの意識の奥にまだくすぶっている固定的性別役割分担意識、男性は仕事、女性は家で家事育児という考え方を振り返ってみる必要がありそうです。いま日本で、性別役割分担について賛成という人は半分弱、もちろん反対という方が増えていますが、諸外国に比べれば圧倒的に賛成が多いのです。

日巻さんのお話は、そんな固定的な考え方をさらりと変えるような爽やかな風を感じるものでした。「大野城市は本当に住みやすくていい街です。楽しんでいます。これからどんどん書き続けます」という表情に、会場は応援団を約束する拍手でいっぱいになりました。

 

大野城市にこんなすてきな若い作家が歩いてらっしゃるのです。本当に楽しみですね。

 

*まどかぴあ図書館の『文學界』4月号に日巻さんの『終わらないジェンガ』が掲載されています。

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