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[No.96]令和の時代へ

更新日2019年04月11日

お元気ですか!

長く楽しませてもらった今年の桜も花吹雪となり、ひらひら舞い踊りはじめました。花びらの中に佇むと昔の思い出の中に引き戻されたり、これからの人生を考えたり・・・何とも言えない感傷的な気分になるから不思議です。私自身は、半世紀以上も前の小学校入学式の日、母に手を引かれて心細い思いで門をくぐったことが今も思い出されます。

そして、桜にかわって新緑が輝き、日に日に緑の山は膨らんで山滴る頃へと、力強い季節の移り変わりに負けないように頑張らなければと思っています。

さて、新しい元号「令和」の発表に心躍らせた4月のスタートとともに、まどかぴあも新しいスタッフを迎え慌ただしく動いています。

図書館では入口に「令和」の特別コーナーを設えて、万葉集や新聞の号外など、その背景にある物語をお伝えしています。

万葉集の巻五、梅花の歌の序文は皆さまもう何度もお読みになったことでしょう。「初春令月、気淑風和(初春の令月にして、気淑く風和ぎ)・・・」の部分がその出典です。万葉集の編纂は大伴家持と言われていますが、その父親の大伴旅人は天平2年正月、管下の国司や高官を招いて宴を開いていたそうです。そこに集まった人々が梅の花を見ながら詠んだ歌32首が万葉集に収められています。

 

大伴旅人は、神亀五年(728年)に妻の大伴郎女を伴って大宰府の長官に赴任してくるのですが、翌年に妻を亡くし落胆の日々を送ります。その傍らで旅人を慰め、そばに寄り添っていたのが山上憶良でした。二人はともに酒を酌み交わしながら語り合い、歌を詠むのです。宴は歌会となり、筑紫に歌壇ができるきっかけになったのです。二人の歌は万葉集の中にたくさんあるのですが、その中には時代を超えて、今私たちの心に重なるような人生を想う歌が数多くあるのです。和歌を以て春の情緒を詠み、お酒を酌み交わしながら様々なことを語り合っていたのでしょう、大伴旅人は酒壺になりたいというほどお酒が好きだったとか、いくつかの歌に人間味を感じたものです。

当時の大宰府の官僚たちは、花や月を愛でながらよく歌会をしたのだそうです。今は花見といえば桜ですが、その当時は梅の花を眺めながら歌を詠む、それが「梅花の宴」です。宴の場所は大伴旅人邸、今話題の太宰府政庁跡近くの坂本八幡宮です。

わが苑に梅の花散る久方の天より雪の流れくるかも 大伴旅人(万葉集巻五・338雑歌)

私は、数年前にラジオの番組で万葉集の特集を担当して、大伴旅人や山上憶良の歌に触れたのですが、およそ1300年前、人生を語り合う二人の姿を想像しながら、その友情とほのぼのとした温かい人間性に深く感動しました。久しぶりにまた万葉集の頁をめくっています。

さて、5月から新しい元号「令和」のスタート、明るく平和ないい時代でありますようにと心から願っています。まどかぴあのボランティア飾り隊メンバーで書家の志賀禮華さんが、新元号スタートに合わせて、今作品を制作して下さっています。まもなくギャラリーモールに飾られる素晴らしい「令和」の文字にご期待ください。

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